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星と僕たちのあいだに
第3章 星のすぐそばに
午後には県を代表するチームの試合が予定されていて、スタンドはにわかに見物客が増えはじめた。
それがこの大会の目玉となる一戦であったが、なんと地元の無名チームが勝利するという大波乱が起きたのだ。
その試合をつぶさにおさえた圭司は、大急ぎでアップロードした。
すると、試合直後からまたたく間にオーダーがカウントされ、この試合だけで五百カット近い注文が入った。
事前に麻衣がチラシを配布したことが功を奏したのは言うまでもない。
『麻衣ちゃん、ホントに神の使いだ。
こりゃ帰ってから忙しくなるよ』
最後の試合を撮り終えた圭司は、木だちで荷物番をする麻衣にそう言ったあと、大きなミスに気づき、青ざめた。
麻衣の宿を手配できていなかったのだ。
早苗ならまだしも、出会って三日目の、しかも自分を見失うほどの破局を食らった女と古びた旅館の和室に泊まるなど、突然のこととはいえわざとらしいにもほどがある。
麻衣をここに誘ったのは、早苗と話す時間を渡瀬にお膳立てしてやろうという、老婆心が起因となったものであるが、その実、気をきかした圭司本人が風呂あがりの麻衣を目の当たりにして浮き足立ち、何とも言い訳の難しいヘマをしていたのだった。
圭司は予約していた旅館へあわてて電話をかけた。
が、旅館の主人いわく、今日はこの大会に参加しているチームやその保護者で埋まっている、どうしてもというなら二間続きの和室に襖をいれて二部屋にすることはできるが、完全に独立した部屋を用意するのは難しい。
旅館組合からも同じような問い合わせが何件かあって断るのに苦労している、おそらく近辺の宿も一杯なのだろう、
と、なまりのきつい方言で、そういう趣旨のことを主人は言った。
圭司はもう一度連絡するといって電話を切り、ネット検索してみたが、観光シーズン真っ只中の南信州には、そう都合のよい宿はない。
――――(もう、開き直るか)
風呂にさえ入れれば最悪の場合、自分は車中泊でもいいだろうと覚悟して、圭司は頭をかきながら旅館の主人が言っていた通りの事情を麻衣に説明した。
『間仕切ってはくれるんだけど、
ひと部屋なんだ……』
麻衣はそれを了承した。
圭司が拍子抜けするほど、あっさりと。