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星と僕たちのあいだに
第3章 星のすぐそばに
 
試合スケジュールのあいまに、圭司は木だちの陰でノートPCを開いた。
麻衣が詰めた弁当をひざの上に抱えこんで、マウスと箸をいそがしく動かしながら、午前に撮ったデータをすべてサイトへアップロードした。

パソコン画面をにらみ、ここが勝負どころなんだ、と圭司は言った。
今しがたやっていた試合の模様をすぐにアップロードすれば、熱冷めやらぬうちに試合会場からスマホで註文してくれるケースが多いのだ。

『特に勝ったチームの親御さんは
 財布のひもがゆるむんだよ』

圭司は画面を指さした。
ボールを蹴る瞬間のカットだ。

『これなんて、すごくいい。
 子供でもほら、軸足の筋肉すごいよ。
 ウエアと芝生の緑がマッチしてる』

蹴ったとこじゃダメなんだ、これから蹴るんだっていう写真じゃなきゃダメなんだ、その一枚から想像をかきたてられて、いろんなストーリーが生まれなきゃ写真には意味がないんだ、と圭司はすこし興奮気味に話した。

麻衣は何度もうなずいて聞いていたが、圭司の顔をじっと見てその口もとへ手を伸ばし、頬についていた飯粒をつまみとると、何事もなかったように、また画面に視線を移した。

圭司は息をのんで硬直した。
頬の米粒と一緒に、二人のあいだをへだてる何かを麻衣の指先に持っていかれたようで、あざやかにやられてしまっている自分を、年上の男としていささか不甲斐なく感じた。

『お、お昼食べたら、
 名刺配ってまわるから
 ここで荷物番しててよ』

気を取り直して、名刺入れと簡易印刷したチラシの束を見せると、麻衣が圭司の手からチラシを奪った。

『私、配ってきます。
 朝たくさん食べたから、
 まだおなか空いてなくて。
 ちょっと、おなか空かしてきますね』

麻衣は立ち上がると、グラウンドのすみで立ち話をする母親たちに取り入って、チラシを手に圭司のホームページを宣伝してまわった。

『すげぇバイタリティだな。
 バイト代、はずまなきゃ』

精力的に保護者に声をかけてまわる麻衣を遠目に見ながら、圭司は麻衣がこしらえた玉子焼きをほおばった。
ふわふわとした優しい口あたりは、麻衣そのものを連想させた。




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