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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第11章 枢機卿の罠
社交辞令を早々に切り上げズバリと本題に入るのも噂通りの実務家ぶりだ。
ノエルも真顔に切り替える。
「はい。ご子息のピエル様を……本日、れんこ……お連れする運びとなりました」
「お連れする、では意味がわからぬよ」
乾いた寂しい笑い声を立てて枢機卿が言う。
「失礼いたしました。ピエル様を連行することになりました」
「そうか……何をやらかしたのかね」
まるで予期していたかのように、いや、日頃から素行の悪い息子のこと、予期していたのだろう、驚きもせずに枢機卿が尋ねる。
「市場にて女性市民に狼藉を働いたとの訴えです」
できるたけ直接的な表現を避ける。しかしそれだけで枢機卿は充分に意を汲むだろう。
「……銃士隊として猊下の政務にも影響があるやと思いご報告に参りました」
これでいい。政界内での保身は枢機卿が自身で手を打つだろう。そしてこれで銃士隊が前もって枢機卿のために動いたという事実もできた。この老獪な政治家はそこも含んでくれるだろう。
「ピエルはどうなるのかね?」
「……留置場にて高等法院での裁きを待つことになります。通常は一週間前後の拘留となりますが……」
父親である枢機卿の失脚を狙う者達は裁判の日を早めようとするはずだ。もちろん枢機卿もまた対抗措置をとることは可能だ。予め備えることができてさえいれば。
皆まで言わずとも意を察して、枢機卿は大きくかぶりを振った。
「ピエルか……あれは私に似ておる」
「そのようなことは……」
意外な一言に思わず失言してしまい、ノエルはすぐに口を閉じた。
「考えが足りぬのだ。私も若い頃はそうだった……」
ノエルも真顔に切り替える。
「はい。ご子息のピエル様を……本日、れんこ……お連れする運びとなりました」
「お連れする、では意味がわからぬよ」
乾いた寂しい笑い声を立てて枢機卿が言う。
「失礼いたしました。ピエル様を連行することになりました」
「そうか……何をやらかしたのかね」
まるで予期していたかのように、いや、日頃から素行の悪い息子のこと、予期していたのだろう、驚きもせずに枢機卿が尋ねる。
「市場にて女性市民に狼藉を働いたとの訴えです」
できるたけ直接的な表現を避ける。しかしそれだけで枢機卿は充分に意を汲むだろう。
「……銃士隊として猊下の政務にも影響があるやと思いご報告に参りました」
これでいい。政界内での保身は枢機卿が自身で手を打つだろう。そしてこれで銃士隊が前もって枢機卿のために動いたという事実もできた。この老獪な政治家はそこも含んでくれるだろう。
「ピエルはどうなるのかね?」
「……留置場にて高等法院での裁きを待つことになります。通常は一週間前後の拘留となりますが……」
父親である枢機卿の失脚を狙う者達は裁判の日を早めようとするはずだ。もちろん枢機卿もまた対抗措置をとることは可能だ。予め備えることができてさえいれば。
皆まで言わずとも意を察して、枢機卿は大きくかぶりを振った。
「ピエルか……あれは私に似ておる」
「そのようなことは……」
意外な一言に思わず失言してしまい、ノエルはすぐに口を閉じた。
「考えが足りぬのだ。私も若い頃はそうだった……」