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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第13章 令嬢銃士の処女査定
 枢機卿に突きつけられた期限切れの借用書に署名された最愛の人の名。

(こ……これはレモンドの借りたお金。私とは関係ない……)

 関係ないはずがなかった。愛しいレモンド。レモンドなしの人生など考えられない。

「わ、わたくしはどうすれば良いのでしょうか……猊下」

 力なく問い返す。五百万フラーナなど、国がひとつ買えそうな金額だ。

「このような金額、わたくしにはどうすれば良いのか見当もつきません」
「ハハハ! 世の中のことを知らない女にはなりたくない、そう父に言ったと聞いたが……」

「返す言葉もございません。しかし五百万フラーナに値する財など、持ち合わせがありませぬゆえ……」

「先ほども言った通りだ。自分で価値決めたまえ。価値の決定が世界を創る……チャンスを与えよう」

「は……はい……」
「君自身の価値を決めたまえ、それで返済するのだ」
「わたくしの……価値」
「そうだ。それが世界を創る、君達の未来を」

 ノエルは知らなかったが、高尚な話運びをしているだけで、枢機卿のやっていることはピエルが朝の市場で売り子の娘にやったことと同じだった。

 これが市民に絶大な人気を誇る枢機卿の真の姿だった。ピエルとの違いは老獪にその本性を隠す、その周到さだけであった。

 万民平等宣言、王都守護銃士隊、この男にとって全てはこの正体を偽装するためのあざとい世渡りの手段にすぎなかった。

 彼らは親子揃っての外道であったのだ。

(わたくしの価値……)

 ノエルは意を決し、ごくりと唾を呑んだ。
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