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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第2章 カテリナ・ラ=フェール
 苦痛に耐えかねた娘の口から発せられた、する必要のない謝罪の言葉がピエルをますます調子づかせる。

「感謝せんかあ! お前のようなヤツをこの高貴な俺様が躾けてやってんだぞっ!」

 ビシーッ! ビシーッ!

「ひぎぃぃっ! あ……ありがとうございますっ! ありがっ……あがあっ!」

「キヒヒッ! どうだっ! このスベタッ! クソ売女! 尻出し淫乱女!」

 ピエルが更にキツく打ち据えてやろうと手を高々と上げた時――

 バコッ!

「痛ッ!」

 何かがピエルに投げつけられた。そのときになってようやくピエル達は周囲の雰囲気が変わっていることに気がついた。

 バコッ! ボコッ!

 次々と果物や野菜が手当たり次第に投げつけられる。

「いい加減にしろコノヤロー」
「弱い者苛めばっかりしやがって!」
「可哀相じゃねえか!」
「ひとでなし!」

 人々が殺気立っていた。やりすぎたのだ。臆病な市民達もさすがに見かねる所業だった。

「やばくねぇか……おい」

 取り巻きのひとりがつぶやく。投げつけるための物だけでなく、棒切れのようなものを手にしている者までいる。

「にっ逃げろっ!」

 慌てて脱出を図る不埒者達を、逃がしはせぬと追いかける群衆。

 市場の狭い路地はたちまち大混乱に陥った。
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