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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第2章 カテリナ・ラ=フェール
 ピエルにとって更に腹立たしいことに、カテリナのこの小癪な対応に群衆がまたどっと沸く。拍手する者までいる。

(クソッ! クソッ! 俺様にこんな赤っ恥を……)

「懲らしめてやって下せえ!」
「カテリナ様ー!」
「ブラーボ! ブラーボ!」

 歓喜の中、事態が落着しようとしたそのとき、女の叫び声が響き渡った。

「逃がしちゃダメだよっ! 話なんか聞く必要なんてねえ!」

 取り囲まれたピエル達を人垣の向こうから指さして喚く女がいた。

「こっ、こいつら……あたいに酷いことしたンだッ! 大勢でよってたかって裸にして……皆の見てる前で……らっ、乱暴を……」

 被害者本人の登場に人々がどよめく。そもそもピエル達を追い掛け回していた者の多くは発端の場に居合わせてはいなかった。

「出鱈目だっ!」ピエルが吼える。
「出鱈目なもんか! こいつの話なんか聞かなくたって……」

 女は目に涙をためて訴えを続けた。

「……これが証拠さ!」

 背を向けた女のスカートは尻まで裂かれていた。その無残な有様は遠目にも明らかだった。目にした――とりわけ今初めて惨状を目撃した多くの人々の受けた衝撃は大きかった。

「ゆ……許せねぇ!」
「外道が……!」
「とっ捕まえろ!」
「こんな奴らはブッ殺せ!」
「殺せ……殺せ!」
「ブチ殺せ!」

 一度は静まった群衆が再び興奮し始める。

「話なんか聞いてやるこたねえ!」
「死刑だ死刑だ! 縊り殺しちまえ!」
「この場で殺せ!」
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