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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第2章 カテリナ・ラ=フェール
 カテリナは敷地にそびえる二階建ての屋敷を仰ぎ見た。

 すでに副官に命じて敷地内への侵入経路が他にないかどうかを調べさせている。同時に、銃士達を配置して門や壁を乗り越えて来る者を排除できるようにも備える。

 幸いまだそのような民衆はいなかったが、このままではいつそうなってもおかしくない。

 ピエル達は警護の指示に忙殺されるカテリナを尻目にとっくに屋敷の中に逃げ込んでいた。

 そこへ副官が報告に戻ってきた。

「カテリナ様。異常ありませんでした。広場に面するこの区画さえ警戒すれば侵入はされません」

「ご苦労だった。ナルシャ」

 カテリナの労いの言葉に副官である女銃士ナルシャが刃は笑みを返す。

 ナルシャ=ブランシェ――フワリと跳ねさせた銀色の短髪。猫科の猛獣のようなしなやかな肉体を持つ長身細身の女銃士。隊長の信頼篤い、銃士隊の副隊長だ。

 カテリナが彼女を右腕としているのは同じ女性だからという理由ではない。ナルシャの腰の二本のサーベルは、ひとたび抜かれれば風となって舞い、刃を触れることなく敵を屠るとまでに畏れられる。

 その剣の技巧は銃士隊の男子隊員達に一目も二目も置かれていた。

 幼王ファルルの万民平等宣言の意を受けて、身分や男女の別なく誰でも入隊できる銃士隊において、問われるのは実力と正義の心のみ。

 カテリナはナルシャのそれを頼りにしていた。

「とんだ籠の鳥になってしまったな」
「この後どうなさるおつもりですか?」
「このまましばらく様子を見よう。興奮とは冷めるもの。いつまでも続くものではない……」

 昼にはこの騒ぎも収まるはずだ。カテリナはそう踏んでいた。

「ピエル殿の処遇はどうされます?」
「連行して法院……だろうな。ここまでの騒ぎを起こしたのだ。さすがのあの男も裁きを受けずには済むまい。衆目の中、あのように訴えられてはもみ消すことも叶わぬであろうしな」

「おとなしく従うでしょうか……」
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