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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第2章 カテリナ・ラ=フェール
 長き戦争を終わらせるため、王侯貴族や諸外国との間を取り持って奔走した父。

 誰よりも争いによる悲惨を憎み、平和を望んだ父はしかし、その努力が実ってようやく戦争の終結も見えようかという時、暗殺され結局自らもまた争いの犠牲者となった。

 銃士となったカテリナがその胸に秘めるのは父の遺志だった。

(争いなどくだらぬこと。人々の命はそのようなことで失うためにあるのでは断じてない!)

 父が国葬に付された日、その亡骸を収めた棺の前で幼きカテリナは誓ったのだ。その棺に被せられた王国フランツィエの国旗に賭けて、父の魂の無念を晴らすために。

 カテリナが再び目を開けた時、その瞳には決意の光が宿っていた。

「もう時間がない……」呟やき、ナルシャに指示を出す。
「ピエルを説得して事態を収めさせる。しばらくの間指揮は任せる」
「はっ」
「……発砲を許可する。群衆を広場から後退させてくれ。だがくれぐれも射撃は威嚇に留めろ。市民の血を流すな。私達は王都の守護者……守るべきは市民。あってはならないのだ、そのようなことは」

「心得ております、カテリナ様」

 フワリと樹上から地に降りてナルシャ。

「頼んだぞ」

 踵を返したカテリナの後ろ髪が空を切る。屋敷へと向かうその姿を見送りながら、ナルシャは言い知れぬ不安を感じていた。

(訴えをしたあの女……外に姿はなかったようだけど)

 何かが引っかかった。

 だがしかし、今は任務だ。事態をこれ以上拡大させないために。

 戦争で故郷を焼かれ、全てを失った過去を持つナルシャもまた、争いを憎むカテリナと心は同じだった。
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