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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第4章 カーラ=ボニファス
 庭では指揮を任されたナルシャが奮闘していた。

「当てるな! カテリナ様のご命令よ!」

 樹上に配した銃士達にマスケットを構えさせ、自らもまた樹の上から広場の群衆を見渡しながら指示を出す。

「撃て!」

 パパパパァーン!

 乾いた射撃音が天高く響き渡る。

 広場を挟んで相対する群衆はたじろぐが――それも一瞬のこと、再び騒ぎ始める。彼らの怒りが銃声によって消し去れるものではないことはナルシャも充分承知していた。だが門の前から広場の奥へとじりじりと距離をとらせることには成功しつつあった。

 カテリナの厳命通り、威嚇にとどめた射撃を保っているおかげで今の所は群衆の中から死傷者を出さずに済んでいる。

 だがまたそれがために、集まった人々が命の危険に怯えて逃げ散るということもなく、それどころか怒り集う市民の数はますます増えつつあるようだ。その証拠に屋敷を包囲する怒号が止むことなくどんどんと大きくなっている。

「殺せ、殺せ!」
「もう、許さねえぞ!」
「引き摺り出して嬲り殺しだ!」

 怒声に混じって投石が壁を越える。遠くから投げ込まれるそれはナルシャ達を脅かすようなものではなかったが。

(それも、いつまでもつか)

 決定的な局面の打開は自分たちの任務ではない。カテリナがピエルを説得するまでの時間稼ぎだ。ナルシャにはよくわかっていた。
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