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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第6章 ニンナーナ
 ロープを飛ばした襲撃者は地上からそれをグイと引き、反動を使って飛ぶように自らの体を宙に舞わせると、ナルシャ目掛けて襲い掛かって来た。

 ナルシャの長い脚が一閃、襲撃者を蹴り落とす。そのままの勢いで、背にした木の幹を踏み台にして地上の敵目掛けてダイブする。

 狙い違わず体当たりを喰らわせ、更に地面を転がりざま二本のサーベル、愛刀クロトゥバヨネットを抜き放つ。

 ヒュン! ヒュヒュヒュン!

 一陣の風となったその切っ先が動きを止めた時、残る黒装束達の中に立っている者はいなかった。

 いや――

「ホーッホッホ! やるじゃないの! ウチで雇ってあげたいぐらいだねえ」

 女が一人。

 透き通るような白い肌、黒いフードから零れる豊かな金髪。深紅のルージュを引いた魅惑的な唇が不敵な笑みに形をゆがめている。

 ナルシャは女から目を外さず、油断なく身構えた。

「貴女こそ……ここまで見事に剣を躱されたのは久しぶりよ」
「見事な二刀のサーベル捌き……王都ファリスにその人ありと音に聞く、銃士隊副隊長ナルシャ=ブランシェだね?」

「そういう貴女はどなた……いえ、こう聞くべきかしらね……どちらのお国の方?」

 ナルシャの問いに女の深紅の唇がいっそう凄みのある笑いを浮かべる。

「ニンナーナ……とだけ名乗っておこう……その疾風の剣技に敬意を払って」
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