この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第2章 カテリナ・ラ=フェール
話は明け方まで遡る。
王都ファリスの朝は早い。石畳の街路を荷馬車が行きかい、朝市の買物客たちは飛び交う売り手の呼び声の中、狭い路地のあちこちに所狭しと並べたてたられた魚や肉、野菜や果物などを押し合いへし合いしながら物色する。
「ちょっと何すんのさ!」
そんな中、喧騒を割るほどの大きな怒声が上がった。若い女の声だ。物見高いファリスの市民はたちまち野次馬と化して何事かと辺りを見回す。
顔一面に散らかり放題のそばかすに、陽によく焼けた健康的な小麦色の肌の、いかにも農民といった質素な身なりの娘が遊び人風の若い男を捉まえてカンカンに怒っていた。
娘とは対照的に、男の方は高級そうな衣服をだらしなく着崩れさせており、どこかの貴族の不良子弟の朝帰りなのだろうということはその場の誰にでもひと目で察しがついた。
娘に袖をつかまれた弾みに、よろけた男が地面に尻餅をつく。
「なっ、なにしやがんだ!」
「そりゃこっちのセリフだよ! あたいのお尻は売りモンじゃないんだ! 気安く触るとそうなるのさ!」
どうやら人ごみに紛れて撫ぜでもされたらしい。多くの人で賑わう市場ではときおり起こる有りがちな騒ぎだった。
娘は本当の「売り物」である屋台に山と積まれた西瓜のひとつを持ち上げ振りかざす。
「コイツで頭叩き割られたいのかい!」
「ヒイイッ」
男勝りな物言いでポンポン責め立てる娘に、さしものの遊び人もタジタジといった様子だった。これで終わっていれば胸のすく椿事として、やんやの喝采で終わっていたのだろうが――。
王都ファリスの朝は早い。石畳の街路を荷馬車が行きかい、朝市の買物客たちは飛び交う売り手の呼び声の中、狭い路地のあちこちに所狭しと並べたてたられた魚や肉、野菜や果物などを押し合いへし合いしながら物色する。
「ちょっと何すんのさ!」
そんな中、喧騒を割るほどの大きな怒声が上がった。若い女の声だ。物見高いファリスの市民はたちまち野次馬と化して何事かと辺りを見回す。
顔一面に散らかり放題のそばかすに、陽によく焼けた健康的な小麦色の肌の、いかにも農民といった質素な身なりの娘が遊び人風の若い男を捉まえてカンカンに怒っていた。
娘とは対照的に、男の方は高級そうな衣服をだらしなく着崩れさせており、どこかの貴族の不良子弟の朝帰りなのだろうということはその場の誰にでもひと目で察しがついた。
娘に袖をつかまれた弾みに、よろけた男が地面に尻餅をつく。
「なっ、なにしやがんだ!」
「そりゃこっちのセリフだよ! あたいのお尻は売りモンじゃないんだ! 気安く触るとそうなるのさ!」
どうやら人ごみに紛れて撫ぜでもされたらしい。多くの人で賑わう市場ではときおり起こる有りがちな騒ぎだった。
娘は本当の「売り物」である屋台に山と積まれた西瓜のひとつを持ち上げ振りかざす。
「コイツで頭叩き割られたいのかい!」
「ヒイイッ」
男勝りな物言いでポンポン責め立てる娘に、さしものの遊び人もタジタジといった様子だった。これで終わっていれば胸のすく椿事として、やんやの喝采で終わっていたのだろうが――。