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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第2章 カテリナ・ラ=フェール
「俺様の連れがどうかしたか……?」
割って入った声の主を見て取り囲んでいた野次馬たちが凍りついた。尻餅の男と同様に放蕩の遊び人といった風体、やはり似たような格好の仲間を二人従えたその男は――
ピエル・ド=ダンバジャン。悪名高き不良貴族中の不良貴族であった。
尖った鼻。薄い唇。ガッシリとエラを張った顎の先はふたつに割れ、太い眉の下では濁った瞳の目玉が貪欲そうにぎょろりとギラつく。
妙に中央に寄ったこれらの顔面のパーツのそれぞれの醸し出す酷薄かつ傲岸不遜、珍妙な雰囲気はお世辞にも美男子とは言えず、背だけはひょろりと高いがそれがまたこの顔立ちの濃さとミスマッチして見た目の気持ち悪さを助長している。
どう見ても異性にはもてなさそうだが、髪型だけは流行の、所々に刈り上げを入れた下げ髪スタイルにしており、これがまた滑稽なほどに似合わぬのだが、それを面と向かってからかうような命知らずはいないだろう。
その父に王国フランツィエの政界でも権勢をほしいままにするダンバジャン枢機卿を持ち、幼王を補佐する宰相という親の威光を笠に不埒三昧やりたい放題の王都最凶最悪の歩くスネ齧り。
良識のある市民であれば話題にするのも憚るようないかがわしい盛り場で夜っぴて遊んでいるだけならまだしも、性根の腐った男という評判通り、たまにこうして取り巻き達と朝帰りの途中で善良な市民と諍いを起こす。
そして悶着となれば、親が権力者であることをいいことに無理難題をふっかけ、逆らえぬ哀れな犠牲者を泣かせて喜ぶのが趣味という、どうしようもない屑なのだ。
悪い噂は枚挙に暇がなく、子分に禁制の麻薬を売らせているだとか、街で見かけて気に入った年頃の娘をさらって弄んでいるだとか、強請る様に金を借りて返さないだとか――まともな市民であれば誰にとっても絶対関わるべきではない人物ナンバーワンだ。
先ほどまでやいのやいのと若い娘に加勢していた囃し声は喧騒はピタリと静まり、ある者はさわらぬ神にたたりなしと足早に立ち去り、またある者は目立たぬように息を詰めて事態の成り行きを窺っていた。
割って入った声の主を見て取り囲んでいた野次馬たちが凍りついた。尻餅の男と同様に放蕩の遊び人といった風体、やはり似たような格好の仲間を二人従えたその男は――
ピエル・ド=ダンバジャン。悪名高き不良貴族中の不良貴族であった。
尖った鼻。薄い唇。ガッシリとエラを張った顎の先はふたつに割れ、太い眉の下では濁った瞳の目玉が貪欲そうにぎょろりとギラつく。
妙に中央に寄ったこれらの顔面のパーツのそれぞれの醸し出す酷薄かつ傲岸不遜、珍妙な雰囲気はお世辞にも美男子とは言えず、背だけはひょろりと高いがそれがまたこの顔立ちの濃さとミスマッチして見た目の気持ち悪さを助長している。
どう見ても異性にはもてなさそうだが、髪型だけは流行の、所々に刈り上げを入れた下げ髪スタイルにしており、これがまた滑稽なほどに似合わぬのだが、それを面と向かってからかうような命知らずはいないだろう。
その父に王国フランツィエの政界でも権勢をほしいままにするダンバジャン枢機卿を持ち、幼王を補佐する宰相という親の威光を笠に不埒三昧やりたい放題の王都最凶最悪の歩くスネ齧り。
良識のある市民であれば話題にするのも憚るようないかがわしい盛り場で夜っぴて遊んでいるだけならまだしも、性根の腐った男という評判通り、たまにこうして取り巻き達と朝帰りの途中で善良な市民と諍いを起こす。
そして悶着となれば、親が権力者であることをいいことに無理難題をふっかけ、逆らえぬ哀れな犠牲者を泣かせて喜ぶのが趣味という、どうしようもない屑なのだ。
悪い噂は枚挙に暇がなく、子分に禁制の麻薬を売らせているだとか、街で見かけて気に入った年頃の娘をさらって弄んでいるだとか、強請る様に金を借りて返さないだとか――まともな市民であれば誰にとっても絶対関わるべきではない人物ナンバーワンだ。
先ほどまでやいのやいのと若い娘に加勢していた囃し声は喧騒はピタリと静まり、ある者はさわらぬ神にたたりなしと足早に立ち去り、またある者は目立たぬように息を詰めて事態の成り行きを窺っていた。