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マスケッティア・オブリージュ ~凌辱の四美銃士~
第7章 ナルシャ・ブランシェ
星空に噴き上がる炎が赤々と天を舐める。
大人達から聞かされる、地の底にいるという化物の舌はきっとこんな風だろう。いや、目の前のこれこそが地下から這い出した魔物のそれなのかもしれない。
きっとそうだ。〝しんぱんのひ″というのが来たのだ。これも大人達がいつも言っていたことだ。
――こわい……こわいよおぉ……
――おとうさん……おかあさあぁぁぁぁん……
泣き叫ぶその声は誰にも届かない。
轟轟と吹きすさぶ熱をはらんだ突風。馬のいななき、大人たちはその喧騒の向こうだ。
――たすけて……だれかたすけて……
気づくと馬屋の干し草に埋もれていた。いつの間に眠ってしまったんだろう。
――ねむったら……ねむったらいけなかったのに……
どうしてかはわからないが、それだけは何故か憶えている。
暗い馬屋の中は静けさに包まれいた。昼の光が閉ざされた戸口の下の隙間から差し込んでいる。
――もうおひるなんだ……
昨日は何か怖いことがあった。よく覚えていないけれど。
でも、もうお日様が上っているから怖くないはずだ。いつもそうだ。
ごしごしと頬に乾いた涙の筋をこすりながら外へ出る。
光の中に少女がいた。自分と同じぐらいの年頃。
少女がこちらを振り向く。その眼には涙が溢れていた。
――なんでないてるの……
光に目が慣れ、外に広がる光景がはっきりと焦点を結んだ時、その理由がわかった。
何もなかった。なくなっていた。
昨日まではあった普通の光景。村の家々、道をゆく子供たち、働く大人達。全てなくなっていた。代わりにあるのは立ち昇る黒い煙と斜めに傾きただ虚ろに立つ、或いは無造作に転がる焼け焦げた墨となったかつてのそれらの残骸だった。
大人達から聞かされる、地の底にいるという化物の舌はきっとこんな風だろう。いや、目の前のこれこそが地下から這い出した魔物のそれなのかもしれない。
きっとそうだ。〝しんぱんのひ″というのが来たのだ。これも大人達がいつも言っていたことだ。
――こわい……こわいよおぉ……
――おとうさん……おかあさあぁぁぁぁん……
泣き叫ぶその声は誰にも届かない。
轟轟と吹きすさぶ熱をはらんだ突風。馬のいななき、大人たちはその喧騒の向こうだ。
――たすけて……だれかたすけて……
気づくと馬屋の干し草に埋もれていた。いつの間に眠ってしまったんだろう。
――ねむったら……ねむったらいけなかったのに……
どうしてかはわからないが、それだけは何故か憶えている。
暗い馬屋の中は静けさに包まれいた。昼の光が閉ざされた戸口の下の隙間から差し込んでいる。
――もうおひるなんだ……
昨日は何か怖いことがあった。よく覚えていないけれど。
でも、もうお日様が上っているから怖くないはずだ。いつもそうだ。
ごしごしと頬に乾いた涙の筋をこすりながら外へ出る。
光の中に少女がいた。自分と同じぐらいの年頃。
少女がこちらを振り向く。その眼には涙が溢れていた。
――なんでないてるの……
光に目が慣れ、外に広がる光景がはっきりと焦点を結んだ時、その理由がわかった。
何もなかった。なくなっていた。
昨日まではあった普通の光景。村の家々、道をゆく子供たち、働く大人達。全てなくなっていた。代わりにあるのは立ち昇る黒い煙と斜めに傾きただ虚ろに立つ、或いは無造作に転がる焼け焦げた墨となったかつてのそれらの残骸だった。