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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第17章 約束
俺の腕の中に、立ったまますっぽりと納まった彼女。
この距離で、改めてその顔を確認すると
……大学の講義、教壇の端でうろちょろする姿が脳裏に浮かんだ。
『………!』
……そうだ、思い出した
確か、去年の自己紹介で……
“ 雑用メインのアシスタント職ですが
週に3日だけ、華の企画部で働いています ”
『……あんた、あの人と同じ会社の……』
絵なんて好きでも何でもないし、特にやりたいことがあったわけじゃない。
ただ単に、両親を安心させる為と、義兄さんと同じだからという理由で選んだ美大。
人にもモノにも何の興味も無かったけど
義兄さんの近くにいるであろう、この助手の女のことだけは
俺自身、どこかで意識していたんだと思う。
『………』
……柔らけぇな。
ってゆーか、なんだろ。
なにこの感じ。
なんか、抱き心地が良いっていうか……
全体重をかけて寄りかかってきてるんだろうけど、不思議とその温もりが心地よくて
俺は何も考えずに、自分から彼女を抱きしめていた。