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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第17章 約束
……だけど
勝手に他人と決めつけた俺の耳に、彼女の掠れ声が響いた。
“ 私が抱きしめてもらいたい人は、たった1人だけなので
遼くんには、このことは秘密にしてください ”
『………』
……今思い返せば
あの一言が、全ての始まりだったんだと思う。
彼女の心情も、背景も
義兄さんとの間柄も、なにひとつとして俺は分からないけど
この時、真っ先に俺の心に生まれた感情を、正直に表わすなら
この女に対する “ 同情 ” と、“ 憐れみ ” だった。
……残念だったね、綺麗なお姉さん。
あの人と共に過ごす時間が、あんたが1番多かったとしても
誰にも負けないくらい、あの人のことを好きだとしても
義兄さんの心には、姉貴しかいない。
……この世を去ってから、5年経った今でも
姉貴の墓に添えられる花が、枯れる日なんて1日も無いんだから……