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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第18章 涙の告白
「……俺は
お前を傷付けるよ、春菜」
「………」
「お前から笑顔を奪いたくない」
顔を背けたまま、小さく言った遼くんの
左の薬指が、私の小指に触れた。
「……会社で、春菜が元気に働いてる姿を見てるから
俺も、仕事が楽しいんだ」
「………!」
「綾瀬とじゃれてたり、取引先の奴らと笑顔で会話してたり
……春菜が笑ってると、俺も自然に笑えてる」
「………っ」
「……お前は、俺に生きる希望をくれてるから
それだけで充分……」
言葉に詰まった遼くんの大きな手が、私の手に重なった。
……触れるか触れないかくらいに弱くて、戸惑うその手を
私はきゅっと握り返す。
「……だから、もう行ってくれ」
掠れ声の遼くんが、静かに目を閉じた。
その横顔が滲んでぼやけてしまうけど
繋がれたお互いの手の力が、だんだんと強くなってくる。
「行けよ」
「……行かない」
「手、離せ」
「離さない」
「……春菜…」
「遼くん、私は遼くんの傍にいたいの」