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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第20章 溢れる笑顔
……駅前から徒歩数分の、橋の入口は
路線の異なる電車から降りた人達が、待ち合わせによく使う場所で
今日も大勢の人でごったがえしているけど
「………っ」
ドクンッと大きく心臓が跳ねる。
急激に喉が渇いて、全身が震えてしまう。
……だって
私の視線の先、10メートルの位置に見えるのは
橋の手摺に、細い両腕を乗せて
海を見つめるあの姿は……
「……ユ、キ……?」
放心した私の口から、久しぶりにその名が飛び出した。
力を失った手から、バッグが地面に落ちると
「………!」
アッシュベージュの髪色が、太陽の光によって金色に変化して
無造作なニュアンスパーマが、初夏の風に吹かれて揺れて
その美しい横顔が、ゆっくりとこちらに振り返ると
「……春、ちゃん?」
「………っ」
「春ちゃん……」
前髪の間から覗く大きな瞳が、私を捉えて
長いまつ毛を揺らして、ユキが目を見開いた。