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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第20章 溢れる笑顔
「………っ」
ユキ……
ユキがいる……!
落としたバッグを拾うことも忘れて、私は両手で口を覆った。
足がガクガク震えて、立っているのがやっとで
ユキがゆっくり近付いてくるのを、ただ唖然としたまま待つことしかできない。
「……春ちゃん」
ポケットに手を入れて、ユキは私の前に立つと
じっと私を見つめて……
「……はは、本物だ」
「………!」
……桜の花びらを髪に乗せた、初めて逢ったあの日と同じように
ユキはふわっと優しく微笑んだ。
「春ちゃん、久しぶりだね」
「………っ」
「元気だった?」
……全身の力が抜けた気がした。
ユキが私の名前を呼んで
私を見て笑ってくれている。
その声を聞けて、笑顔を再び見れたことで
胸がいっぱいで、じーんと温かくなって
……どうしてかな……
なんだか、すごく安心して
もう、泣きそうになってしまう。