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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第20章 溢れる笑顔
ドクンドクンと、心臓が激しく波打つ。
「………っ」
頷いたユキを見て、私は急いで落ちたままのバッグを持つと
乱暴に中から携帯を取り出して、遼くんの番号を呼び起こした。
「……ねぇ 春ちゃん、あれ…」
「ごめんねユキ……!」
「え?」
「私、ちょ、ちょっと混乱して…」
コール音が鳴る携帯を耳に押し当てながら、ぎゅっと目を瞑った。
……手が、震えてしまう。
全身から汗が噴き出ている。
ドキドキし過ぎて、目の前にいるユキを真っ直ぐ見る事ができない。
……だって、信じられない。
サヨナラをしてから、一度もその姿を見なかったユキが……
「……もう! なんで出ないの…っ」
何度かけ直しても、コール音から留守電になってしまう。
私達を呼び出した張本人が居ないなんて……この状況、どうすればいいの?
「ユキ…どうしよう。
遼くん、繋がらないんだけど…」
「春ちゃん、ここに来るまで気付かなかったの?」
「……え!?」
「……あの人、後ろに……」