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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第21章 来世の、来世で
……人の幸せばかりを願う、心の優しいユキに
私は一体、何をしてあげることができるだろう。
……今、私の手を包んでくれて
こうして私に微笑んでくれているけど
きっと、本当はその笑顔の裏で……
「………」
……この時
なぜかは分からないけど
大丈夫と、繰り返し伝えてくれたユキを見て
……私の心に、自分でも説明することが出来ない……不思議な感情が込み上げてきた。
「……ねぇ、ユキ」
目を細めて海を見つめているユキの手を
そっと引き寄せて、握り返す。
「ユキ、あの……」
「…ん?」
「……あの時……」
言葉に詰まった私の方へ、ユキが再び視線を戻した。
吸い込まれそうな、切ない瞳。
……私の脳裏に、大学の屋上がぼんやりと蘇る。