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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第21章 来世の、来世で
「春ちゃんってば、突然どうしたの?」
「………」
「あんな……一瞬言い掛けただけの台詞だったのに
よく覚えてたね」
……私が視線を逸らさないから
眉を寄せて、ユキは困った顔をした。
「改めて伝えるほど、大した話じゃないよ」
「……でも、知りたいの」
「んー…なんだったっけな、忘れた…」
「お願い」
「………」
「お願い、ユキ……」
私を見ないまま、腕を引こうとしたユキ。
だけど、私はさっきよりも強くその手を引き留めた。
……夕陽がより一層色濃くなって
私とユキの影が、重なり合って伸びている。
「………」
沈黙が続いて
近くで遊んでいた子供達が、離れていって
静寂が訪れると
「……伝えたかったのは」
海を見つめたまま、ユキが静かに続けた。
「 “ 生きてね、春ちゃん ” 」
「………!!」
「どうか、生き続けてほしい。
義兄さんにとっても、姉貴にとっても……俺にとっても
春ちゃんは、希望の光なんだ」
「………っ」
「……大袈裟に聞こえるかもしれないけど
本当だよ」