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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第21章 来世の、来世で
鼻歌でも歌い出しそうな軽いノリで、ユキに話しかける遼くん。
「移動する度に、確認の為に振り返りやがって。
その都度隠れるこっちの身にもなれよ」
「………」
「せっかく全身黒ずくめで来たってのに、意味ねぇじゃねーか」
……本人が言う通り
ブラックのTシャツに、クロスプレートをあしらったネックレスを下げて
タイトなクライミングパンツも同系色で、シンプルでかっこいい……
って、そうじゃなくて!
「りょ、遼くん……」
ほ、本当に……一体何がどうなってるの?
さっきまで、苦しいくらいの切なさでいっぱいだったのに
遼くんの突然の出現で、途端に空気が変わってしまった。
……それに
ユキが、遼くんに気付いてたって……
「……途中から
隠れる努力すらしてなかったくせに」
「………!」
掠れた声が聞こえて、ハッとして遼くんから視線を外すと
深い溜息をついたユキが、ゆっくりと顔を上げた。
……その目が、少しだけ赤い。