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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第22章 いい女、いい男、もっといい男
……だから、なんでそっち方向へ持っていくんだよ。
煙草を咥えたまま、宮本が俺の方に振り向いたけど
グラスを手に持って、条件反射でサッと視線を逸らした。
「……加賀谷」
「やめろ、なんか怖ぇ」
「今住んでる俺のマンション、隣り空いてるから」
「・・・だから?」
「今すぐ越して来いよ」
飲んだビールを吹き出しそうになる。
思わず凝視したその先の……俺を見つめる奴の目は至って冷静だ。
「それか俺の部屋でもいいぜ」
「アホか。
何が悲しくて男と同居なんて…」
「沙月に指1本触らねぇと約束するなら、俺は構わない」
「~~触るか! バカじゃねぇの…
……!」
舌打ちをして視線を逸らした宮本の目から、再びその光が溢れてきて
「……だから、何でそんな綺麗に泣けるわけ?」
……煙を浮かべるその横顔を
暫くの間、呆気に取られて眺めていたけど
普段冷血ドSを気取ってる男が、人目を憚らず涙を流し続けるから
「……はは。マジで変な奴」
……本当は
一部始終を見ていたであろうこの男が、涙する理由も
その発言の意味も、ちゃんと伝わって分かっているから
俺はそう言って小さく笑った。