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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第7章 眠れない夜に、温もりを
「………っ」
……人を惹きつける、低くて綺麗な声。
今までほとんど話したことは無いのに、その深い瞳が全てを捉えているようで
心の奥から、何かが込み上げてきて
どうしてか、鼻の頭がつーんと痛くなる。
「あ、あの……お金は……」
「いいよ、俺が払う。
沙月、言っとくがお前は自腹だからな」
「………!」
コートを受け取って立ち上がった沙月が、ビクッと体を震わせた。
「蓮見を送ったら、絶対戻ってこい。
説教してぇことがある」
……へっ?
せ、説教って!?
驚く私とは対照的に、沙月は額からダラダラと汗を流して
「わ、分かりました……」
さっきまではずっとタメ語で話してたのに
何かを悟ったように、宮本さんに深々と頭を下げた。
い、一体どうしたんだろう……?
「行こう、春菜」
「う、うん……
宮本さん、お先に失礼します」
コートを羽織って、私もペコッと会釈をすると
宮本さんは遼くんを見たまま、煙草を掴んだ手をひらりと振った。