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退魔風紀 ヨミ ~恥獄の学園~
第3章 「許さない!」
「許さない!」

 詠の眼が怒りに燃える。

 もう、ギニーのことを依頼人とは思わない。こんな卑劣な相手の言うことなど、聞く耳は持たない!

「彪!」

 詠は押さえつけられたまま、指だけの動きで使える唯一の契印を結んだ。この印に攻撃的な力はない。

 だが――

「どっ、どこへ行ったお?」

 ギニーが驚いて、大声を上げた。

 詠が結んだのは目くらましの契印だ。カメレオンのように周囲の景色と同化する。効果は短時間ではあるが、その間、触れられても相手は詠を感知できない。ギニーには詠が突然消失したかのように感じられただろう。

「出てこいお! 逃げるなお!」

 立ち上がって、周囲を見回すギニー。怒りと狼狽が目まぐるしく入れ替わる醜い表情で叫びまくる。

 詠はというと、その間に静かに立ち上がり、悠々とスカートについた埃を払ってからギニーの背後に回っていた。

「くっそおおお! この卑怯者おお!」
「その言葉、そっくり返すわ」

 姿を現す。

「あっ! いつの間に!」
「遮!」

 振り返り、再び飛びかかったギニーが見えない壁に激突したかのように、何もない空間にガツンとぶつかり、仰向けに倒れる。

「あぶぉ……!」
「障壁の契印よ」
「ひきょっ……卑怯なマネを……」
「二度も言ったわね、この私に対して卑怯だなんて……」

 宙を舞う詠の腕が再び契印を形作る。

「壊!」

 ズドム!

 ヘビー級のボクサーの渾身のストレートが叩き込まれたような音がした。
破壊の契印は超圧縮された衝撃波を生み出す。その叩き込まれた先はもちろん、ギニーの腹だ。

「ぎゃぐううううう~!」

 丸い体が無様にごろごろと転がり、壁に激突した。

「私、卑怯な男は嫌いなの」

 言ってから少し考え、念のために付け加える。

「……あなたのことよ」

 しかし、どうやらもうギニーには聞こえていないようだった。キモオタ少年は完全にのびていた。
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