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退魔風紀 ヨミ ~恥獄の学園~
第3章 「許さない!」
「りゅ……流儀……ですって? 魔物の分際で……」

「流儀は大事だぜえ。流儀をないがしろにすれば存在意義ってやつがなくなっちまう。俺様は誘惑の悪魔だからな、無理やり女を襲うのはNGだ」

 魔物のくせに現代的な言葉を使う。

「……ご大層なことね。だけど、それを後悔させてあげるわ。流儀を守って粛清されなさい!」

「確かに、お前のような美しい女になら、滅ぼされてもよいかもしれないな」

「……なんですって?」

 思いもよらぬインキュバスの返答に詠は虚を突かれた。先ほどまでと態度が百八十度違う。

「偽らざる本心だよ。淫魔は人と交わることが存在理由だ。想像できるか? 魔と人。相容れぬ定めの中で何百年……肉体は結ばれど、心の通わぬこの孤独と絶望が」

「そ、それは……」

 そう言われると、確かにインキュバスというのは魔の中でも哀しい一族なのかもしれない。

「俺には本当の姿というものもない。何にでもなれるが、何者でもないのだ」

 インキュバスが再び変化する。醜かった顔立ちが美しく整った美青年のものとなり、その均整のとれたひきしまった裸体が惜しげもなく詠の前にさらされる。
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