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BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥
「でも、相沢さんって何でうちの工場で働いてるの?相沢さん、可愛いしもっとお洒落なカフェとかで働いてても可笑しくないのに」

「別に…、可愛くなんかないですよ~」

作業をしながら桜木さんと小さな声で談笑。

お世辞とわかっていながらも少しだけ嬉しい。

桜木さんこそ口が上手いな。

昨日は黒埼さんと一方的な喧嘩になっちゃったけど、やっぱり私にはこういう生活があってるのかも知れない。

何気ないこんな毎日が。


「ところで相沢さんって、彼氏とかいるの?」

「え…?」


彼氏。

その響きに一瞬心が迷ってしまった。


彼氏…、黒埼さんの事。

でも、彼氏と呼べるような関係じゃない。

昔と変わらず人形のように扱われてる。

彼氏…、本当にそう呼んでいいのだろうか…?


「い、一応いますけど…」

「やっぱり彼氏持ちか~。その彼氏とは付き合って長いの?」

「あの…、半年ぐらいですかね…」

「まだラブラブ期間じゃん!いいな~!じゃあ、昨日の日曜もデートとかしたの?」



あ…、デート…。

その言葉に寂しさを感じた。

デートなんて呼べるようなもんじゃないから。



そうだよね。

普通、交際半年って言ったらラブラブ期間だし週末はデートぐらいするもんだよね。

「あの…、彼は仕事が忙しくて…、あんまりデートとかは…。昨日も特にデートは…」

自分で言ってて寂しくなる。

桜木さんは何も悪くない。

黒埼さんは社長さんで、週末とか関係なく忙しい人だと言うのは最初からわかってたこと。

「そ、なんだ…。ごめんね、変なこと聞いて」

「いえ…」

桜木さんは何も悪くない。

けど、付き合って半年、外に出てデートらしい事を1度もしていない私達の方がおかしいのかも知れない。





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