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BLACK WOLF~crime~
第5章 兎ノ涙
私の衣類を持ったまま私に背を向け桜木さんからのメモ用紙を黙って黙読している。


…どうしよう。

連絡先が書かれてるメモなんて怪しすぎる。

況してや"お兄ちゃん"なんて書かれてたら、黒埼さんが怒るのも無理はない。


「桜木、弘志…?」

「そ、それは…、その…っ」


桜木さんを庇えばまた誤解をされてしまう。

でも、このままじゃハルちゃんのように桜木さんも酷い目に遭わされる。

黒埼さんに容赦なんて言葉はない。

また…、誰かを傷つけてしまう…っ。


「……この男との関係は?」

「あ、あの…、働いてた職場の社員さんで…、働いてた時からいろいろ面倒を見てもらってて…」


声が、体が震える。

桜木さんとは何も、疚しいことは1つもないが、黒埼さんの怒りに萎縮して全身が震えて言葉も上手く出てこない。

こんなんじゃ余計に誤解されてしまう。

桜木さん、ごめんなさ…っ。



すると、黒埼さんはそのメモをぐしゃっと握り潰し自分のズボンのポケットにしまいこみ

「この男には近づくな…」

「え…?」

「いいから。この男には2度と近づくなっ‼」


声をあらげたかと思えば、考え込むようにその場に立ち竦んでいるだけだった。







………?

「黒埼さん…?」


黒埼さん、いつもみたいに私に酷いことしないの?

いつもだったら男性の名前を見ただけで私に乱暴な事をするのに。

何だか、いつもの黒埼さんらしくない…。

不思議そうにドキドキしながら黒埼さんの様子を眺めてみるが、私に背中を向けたままで黒埼さんの表情がちゃんと見れない。


「あの…」

「……悪いが、用事を思い出した。先に帰る」

「えっ?」





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