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BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥
溜め息交じりに思わず俯き前をちゃんと見てなかった。
知らないうちにすれ違った人に名前を呼ばれ、ハッとして振り返った。
男性の声だったけど…、この声は…。
忘れない。
聞き違えるはずない。
「ハ、ルちゃん…」
あ…。
そこにいたのは、幼馴染みのハルちゃんだった。
ハルちゃん…。
どうしてここに…?
「…久しぶりだな」
「あ、うん…」
『舞っ!』
耳の片隅に残ってるあの悪夢の最中、ハルちゃんの私を呼ぶ声が響いた。
思い出してしまった。
あの日から今日までハルちゃんに会わずにいたし、連絡すらしてなかった。
出来なかった。
私はハルちゃんを傷つけて裏切ってしまったのだから。
「何してんだ、こんなとこで?」
「お、お弁当を買いにコンビニに…。ハルちゃんは…?」
どうしよう。
ハルちゃんの顔、ちゃんと見れない。
ハルちゃんを前にして俯いたままの私にハルちゃんは相変わらず優しい口調で話しかけてくれる。
「俺は仕事。取引先の会社がこの近くで今は昼休み中」
「そっか…」
チラッと見たけど、ハルちゃん、スーツ姿が様になってきてる。
黒埼さんと同じぐらいの身長なのに、ハルちゃんの方が少し細身だし。
久しぶりに会った幼馴染みなのに、罪悪感のせいで上手く喋れない。
嬉しい反面、心苦しさでいっぱいだ。
「っていうかお前、その格好…」
「え?あの、これは…」
見ると、私は上半身だけ作業着を着たままになっていた。
薄緑色の作業着に胸元には○○工場という刺繍まで施されてる。
「私、この近くの工場で働いてるの…」