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BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥
あ…。
やだ、今1番思い出したくなかったのに。
自分の言った台詞で墓穴を掘ってしまった気がした。
食事をする手が止まった。
「どうしたんだよ?……あいつと上手く行ってねぇのか?」
「あ…、そんな事は…」
嘘だ。
昨日だって喧嘩しちゃったし、住む世界が違いすぎてたまに置いてけぼりの気分になる。
私と黒埼さんって、根本的に何かが違う。
けど、ハルちゃんの顔がちゃんと見れない。
後ろめたさから目線を反らしてしまった。
ハルちゃんを…
あんな酷いことをしたハルちゃんに黒埼さんの事を相談するなんてムシが良すぎるし、何だかハルちゃんにだけは知られたくない気分だから。
「別に俺に気を使う必要はねぇよ。お前に迷惑かけられるのは慣れてるし」
ハルちゃん、相変わらず優しい。
まるで春風のように私の心を吹き抜け癒してくれる。
「黒埼さんとは何にもないよ。私の問題だから」
「だったら尚更相談に乗るって。…あの男の話なら聞きたくなかったけど」
…そりゃそうだよね。
甘えてるって、自分でもわかってる。
ハルちゃんの手を取らず黒埼さんの元へ走ったあの日のことを思い出すと胸が痛んだ。
私はハルちゃんの気持ちに応えられなかったのに。
「あの、実は…」
私はハルちゃんに今の悩み事を口にした。
自分のやりたい事が見つからず、自分の将来すら見えず、具体的な夢すらない。
こうして同じことの繰り返しの毎日をただ生きてるだけだと。
周りの人が輝いて見えてる、と。
「…そっか。確かに簡単に答えの出る問題じゃねぇよな」
「それで、つい暗くなっちゃった。何か、私だけダメ人間みたいで…」