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BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥
公園の木々の隙間から射し込む木漏れ日。
頬を撫でる暖かな春風。
そんな昼下がりの公園のベンチ。
考え事をするには勿体ない季節なのに。
黒埼さんは"つまらない"と笑った。
黒埼さんからすればつまらない悩みかも知れないが私にとっては重大だ。
周りの友人や知り合いはみんな大人になって行くのに。
ハルちゃんはうーんと首を傾げながら自分の事のように悩んでくれてるけど…、本当は黒埼さんと同じように私の事をバカだとか思ってるのかも知れない。
ハルちゃんのような立派な社会人からすれば私の悩みは贅沢で我が儘なものかも知れない。
心の底では━━━━━━。
「まぁ、でもそれがわからないから人生なんじゃね?それを見つけるのも人生だし。舞みたいな考えの子って案外多いし、舞もそこまで思い詰める事ねぇって!」
「でも…」
「俺らさぁ、社会人っつってもギリ10代だしこれからその答えを探して行けばいいんじゃねぇの?」
「ハルちゃん…」
「俺だって今の会社、好きで入ったわけじゃねぇもん。ブラックだとわかってりゃ入社してねぇし…」
あははと苦笑を浮かべたハルちゃんの髪を暖かい春風がふわりと撫でた。
「バカに…しないの…?」
「え?何で?悩むってのはそれだけ真剣って事だろ。舞は常に真剣っつーか、前向きっつーか…」
そうだった。
ハルちゃんは、私と同じ世界の人だ。
私のこんな悩みをちゃんと聞いてくれて、慰めてくれて…。
ハルちゃんは何も変わらない。
いつもその優しさで私の心を軽くしてくれる。