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BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥
「うん…、いいかも…」

「だろっ!舞はそーいうのに向いてるって前々から思ってたからさ!」



私が、誰かのお世話をする仕事に…?

黒埼さんに甘えて、囚われてるような身の私が誰かの役に立つ?

考えもしなかったが自分が誰かの役に立つ、そう考えただけで何故か心の中が暖かくなった。

私にも出来る事があるのだと。

私でも誰かの役に立つのだと。


「もし本当にその道に進むんなら応援するから。何ならすぐにでも願書を━━━━」

「やだ、ハルちゃん。気が早いよ!まだお金も貯まってないのに」

そうだ。

将来の目標が決まってもまずはお金を稼がなきゃ。

都心のアパートというのはどうしても高い。

今は生活費でいっぱいいっぱいだし、片付けなきゃいけない問題もたくさんある。


それでも、自分の人生の見通しが少しだけよくなった気がした。

こんな私でも誰かの役に立てる、夢を見つけたと幸せな気持ちになれた。


「ハルちゃんのお陰だね。ありがとう」


ハルちゃんはいつも私を見てくれていた。

私がどんな性格かを良く知ってくれてる。

私より私の事をわかってくれているのかも知れない。

将来の目標すら自分で決められないダメな私にアドバイスまでくれた。


なのに私は、こんな優しくて大きなハルちゃんの手を掴めなかったんだ…。


「……あのさ、舞」

「何?」

「…こーいうのって普通彼氏に相談するもんだろ?あの男は俺らよりずっと年上だしちゃんとしたアドバイスもしてくれんだろ?」


あの男って、黒埼さんの事かな?

さっきまで笑顔だったハルちゃんの横顔から笑顔が消えていた。



ハルちゃん…?



「彼女であるお前がここまで悩んでるのにあの男は相談にも乗らねぇのかよっ!?違うだろ?恋人ってそんなんじゃねぇだろっ!?」





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