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BLACK WOLF~crime~
第10章 最後ノ恋
さっきまで、火花を散らして喧嘩してたのが嘘みたいに2人の間の空気には何だか気まずさが感じられる。

それもそうだ。

今まで喧嘩ばかりしてお互い憎み合ってて、こんなふうにお礼を言ったり庇ったりするような仲じゃなかったもの。

「で、足の方はどうだ?」

「ん。ギプスが取れたらリハビリ。筋や筋肉まで炎症してたみてぇだから」

「…そうか」

小さく呟く黒埼さん。



黒埼さん、ハルちゃんに対して罪悪感を感じてるんだ。

自分のせいだと、さっきまで酷く落ち込んでたから。



「桜木の事は刑事さんから聞いた。裁判の事とかいろいろ…」

「あぁ。心配するな。舞やお前に変な噂や誤解は招かないようにする」

「さすが~、社長さんともなればやる事や言う事が違うなぁ」

「ふん。それぐらいはしてやるさ」



………あ。



その時、私は見た。

つまらなそうに鼻で笑いながらも口角を上げて柔らかく笑う黒埼さんの顔を。

まるで、暖かな春風みたいな笑顔を。



「あのさー、それとさー、もう1つ頼みがあんだけど」

「何だ?」


ハルちゃんから黒埼さんにお願いがあるみたいだ。

ハルちゃんから黒埼さんに頼みごとって珍しい…。

何だろう…。


「あの、さー…」


いつもみたいに軽い口調で…


しかし、ハルちゃんは黒埼さんから目線を外して口をモゴモゴと動かしてるだけだ。

何か…、言いにくい事なのかな?


「何だ?言わなきゃわかんねぇだろ?」


黒埼さんの目すら見ようとしない。

黒埼さんも若干イライラしてるみたいだった。

「ハルちゃん…、どうしたの?」








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