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BLACK WOLF~crime~
第10章 最後ノ恋
「…………舞に、もう少し優しくしてやってくんね?」
━━━━━━っ!?
「ハ、ルちゃ…」
ハルちゃんの突然の申し出に私は思わず面食らってしまった。
ハルちゃんから黒埼さんへの頼みごとって、それなの…?
私に優しく…?
当のハルちゃんも顔を背けながら目線を泳がせて、気まずそうだった。
「優しく…?」
「あんたが忙しい社長の身だって事はわかってる。俺達と住む世界が違うって事も知ってる。あんたに俺達の生活や価値観を理解しろなんて言わない。けど、舞のことを抱き締めてやることぐらいは出来るだろ?」
「…………。」
ハルちゃんの話を私はポカーンと間抜け面のまま聞くしかなかった。
ハルちゃんのその申し出にびっくりして硬直してしまったままだ。
「俺の事を羨ましいとか何とか言う前に、もっと簡単で単純な方法だ。回りくどいやり方で舞を守るんじゃなくて、ただ舞のそばにいてやって欲しい…」
ハルちゃん…。
ハルちゃんがそんな事を考えてたなんて、考えもつかなかった。
私の為に、ハルちゃんは…。
黒埼さんのやり方はいつも遠回しで、その無愛想な表情は何を考えてるのかすら読み取れなくて
遠回りして、遠回りして、やっと気づくんだ。
黒埼さんは社長だし、普通のカップルみたいな事は出来ないって諦めてた。
そんな事はどうでもいい。
ただ、ただ一緒にいたい。
単純で簡単な気持ちだけど、ただ一緒にいたい。
「お前…」
「━━━━━話しはそれだけだ。礼も言ったしな。足も痛むしそろそろ帰るわ」
そう言うと、カツンッと松葉杖を付いて病室を出ていこうとするハルちゃん。