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BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥
「━━━━━っ!」
車を走らせる黒埼さんの横顔がいつもより冷たい。
助手席の窓から公園を振り返ると、立ち竦んだままのハルちゃんの背中が見えて、その姿に胸がズキズキと痛んだ。
黒埼さんは優しい人だと、ずっと思ってた。
そう信じてた。
私と私の両親のことをずっと心配してくれてた。
なのに、どうして━━━━━━。
今の黒埼さんはあの頃と同じ、ただの冷酷な狼に戻ったみたいだ。
「ど、して…」
黒埼さんの事がまたわからなくなってしまいそうだ。
悲しみに暮れていると、車は私の職場とは逆の方向へと曲がり進んでいく。
……黒埼さん、何をする気?
「あの、職場は…?」
そろそろ昼休みの終わる時間だ。
早く帰って準備しないと午後の仕事に間に合わない。
「黒埼さん。私の職場はこっちじゃないです…」
「…………。」
「黒埼さ…」
車は…、職場からどんどん離れていく。
黒埼さんは何も答えないままだ。
まさか…っ
「車、止めて下さい!職場に戻らないと迷惑が…っ」
しかし、黒埼さんは私の声を無視し車を止めるどころか更にスピードを上げる。
職場に返してくれる気はなさそうだ。
「ねぇ、黒埼さんっ!私を職場に戻してくださいっ!」
「………うるせぇ」
唸るような低い声。
怒鳴られた訳じゃないのに体が硬直した。
こんな声を出すときの黒埼さんは決まって何かを企んでるんだ。
……逆らえない。