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BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥


シャァァァァ…



温かなシャワーが私を一気に包む。

浴室いっぱいに立ち込める湯気と噎せ返るほどのバラの香り。

…いつも思うけど、黒埼さんが使ってるこのバラのシャンプーって凄く高そう。

一気にバラの香りに包まれて、優しい泡が私の髪を包んでいく。

黒埼さんに誉められたこの黒髪が、今じゃ鎖のように重い。



"俺はお前のその黒髪が好きだから、切るなよ"

その一言が私の心にのし掛かって来る。



「お嬢様、着替えを置いておきますね」

浴室の磨りガラス越しに酒井さんの声が聞こえた。

「あ、はい」

私は今、都心で小さなアパートを借りてそこで独り暮らしをしている。

黒埼さんとは住んでいない。

なのに、黒埼さんは自宅に私用の服を何着が置いてくれている。

別に一緒に住んでるわけでもないのに。

それに、黒埼さんが用意してくれる服っていっつも…。










「まぁ、お嬢様、よくお似合いです!さ、お茶でもどうぞ」

「あ…はぁ」

…浴室に置いてあったのはバスタオルとワインレッド色のシルクのキャミソールワンピ。

黒埼さんが用意してくれる服はいつもこんなのばかり。

変に露出してるというか…、高価な生地に濃い色。

酒井さんは笑顔で"似合う"とか言ってくれてるけど、本当にそう思ってくれてるんだろうか。

酒井さんに誘われてあの広いキッチンへ行くと、テーブルの上には温かな紅茶が用意されていた。

「旦那様が特別にお取り寄せしたピーチティらしいです。さ、お席にどうぞ」

「…どうも」

酒井さんに椅子を引かれて席についた。

何か…、こんな事されるのも未だに慣れない。


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