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BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥

「あら、そうだわ!確かクッキーもあったはず」

そう言いながら酒井さんは戸棚をガサガサと探しだした。


私の休みは大体こんな感じだ。

大学を中退させられた今、平日は朝から晩まで派遣社員として仕事。

週末の休みはこーして黒埼さんの家にお邪魔してる、が

黒埼さんは常に忙しく週末ですら家にはあまりいない。

私が遊びに来ても、自分の欲求を吐き出しさっさと仕事へ行ってしまう。

黒埼さんの帰りを待ってる間、私が退屈しないようにと酒井さんが私の相手をしてくれている。

それでも黒埼さんが帰ってくる時間はいつもバラバラで、酒井さんだって時間がくれば自分の家に帰って行く。

その間、私はこの広い邸で1人で黒埼さんの帰りを待っている。



音も何もない、バラの香りだけがするこの邸に。



「ありましたよ、クッキー。今お皿に移しますから」

……でも、私が来るまでは酒井さんがそうだったんだ。

私が来るまでは酒井さんが1人でこの家にいたんだ。

まぁ、酒井さんは黒埼さんの恋人じゃないし雇われたハウスキーパーさんだから寂しくはないだろうけど。


「ねぇ、酒井さん」

「はい。何でしょう?」


酒井さんのプライベートの事だし聞いちゃ悪いかな?

でも…


「酒井さんは、どうしてこの仕事をしてるんですか?」

「はい?」

「あの…、こんな広い家を1人で掃除したりするのって大変でしょ?ほ、他にもハウスキーパーの方っていらっしゃるんですか?」

酒井さんはキョトンとした顔でこっちを見ている。

変なこと聞いちゃったかな。

でも、酒井さんっていつもニコニコして嫌な顔1つせず仕事してるけど、辛いときとかってないのかな。


「いえ、旦那様はいい人ですし特に苦に感じたことはないです。それに昔から掃除が好きでしたから、好きなことが仕事に繋がって、毎日楽しいですよ」






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