この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥
「あら、そうだわ!確かクッキーもあったはず」
そう言いながら酒井さんは戸棚をガサガサと探しだした。
私の休みは大体こんな感じだ。
大学を中退させられた今、平日は朝から晩まで派遣社員として仕事。
週末の休みはこーして黒埼さんの家にお邪魔してる、が
黒埼さんは常に忙しく週末ですら家にはあまりいない。
私が遊びに来ても、自分の欲求を吐き出しさっさと仕事へ行ってしまう。
黒埼さんの帰りを待ってる間、私が退屈しないようにと酒井さんが私の相手をしてくれている。
それでも黒埼さんが帰ってくる時間はいつもバラバラで、酒井さんだって時間がくれば自分の家に帰って行く。
その間、私はこの広い邸で1人で黒埼さんの帰りを待っている。
音も何もない、バラの香りだけがするこの邸に。
「ありましたよ、クッキー。今お皿に移しますから」
……でも、私が来るまでは酒井さんがそうだったんだ。
私が来るまでは酒井さんが1人でこの家にいたんだ。
まぁ、酒井さんは黒埼さんの恋人じゃないし雇われたハウスキーパーさんだから寂しくはないだろうけど。
「ねぇ、酒井さん」
「はい。何でしょう?」
酒井さんのプライベートの事だし聞いちゃ悪いかな?
でも…
「酒井さんは、どうしてこの仕事をしてるんですか?」
「はい?」
「あの…、こんな広い家を1人で掃除したりするのって大変でしょ?ほ、他にもハウスキーパーの方っていらっしゃるんですか?」
酒井さんはキョトンとした顔でこっちを見ている。
変なこと聞いちゃったかな。
でも、酒井さんっていつもニコニコして嫌な顔1つせず仕事してるけど、辛いときとかってないのかな。
「いえ、旦那様はいい人ですし特に苦に感じたことはないです。それに昔から掃除が好きでしたから、好きなことが仕事に繋がって、毎日楽しいですよ」