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BLACK WOLF~crime~
第2章 森ノ蝶
ここで働きだして間もない新人の私でも、突然いなくなったとなればちょっとした騒ぎになったかも知れない。

作業にも支障が出たかも知れない。

事務員さんの私を見る目が明らかに泳いでいたし、昨日の事は耳には入ってるのだろう。

「あー…工場長さん、ですね。少々お待ち下さい」

「はい…」

カラッと小窓を閉めてどこかへと走り去っていく事務員さん。

私は不躾ながら玄関で待たせてもらうことにした。


こんなに目を腫らして、怪我までして、こんな女がいきなり訪問したらそりゃ目も泳ぐ。

況してやそれが昨日突然いなくなった張本人なのだから、一目で何かあったのかと察しがつく。

しかし、勢いでここまで来たのはいいが肝心な言い訳がまだ決まってない。

工場長さんを目の前にして上手く喋れるかどうかもわからない。

工場長さんは普段、あまり私達の目の前には現れないし、入社してからこれと言った会話もしていないし。



世の中のサラリーマンも部長さんや社長さんに会うときはこんなふうにドキドキするもんなのかな?



怒られるのを覚悟して、言い訳を考えながらドキドキしつつも工場長さんを待っていると━━━━━━




「お待たせしました」

「あ…」

パタパタとスリッパを鳴らしながら工場長さんが目の前に現れた。

工場長さんを連れて来てくれた事務員さんは私と工場長に会釈をすると事務所へと戻って行ってしまった。


「あっ、相沢さん」

「お、おはようございます。あの…お忙しい時間帯にすいません…」


私の目の前に立っているのはここの工場長さん。

年齢は50半ばぐらいで、既に作業着。

きっと在庫整理とかやらなきゃいけないことは沢山ある人だ。

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