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BLACK WOLF~crime~
第2章 森ノ蝶
「あの…、その…昨日私、あの…」

言葉が出てこない。

ダメだ、工場長さんを前にすると何の言い訳も出ない。

こんなところでオロオロしてたら工場長さんに悪いのに━━━━



「あ、いや…き、昨日の件ね、うん。だ、大丈夫ですよ!何とかなりましたから!」

「………え?」

「き、気になさらないで下さい!相沢さんがそんな事気にしなくても…ね!」




え…?

怒られるとばかり思っていたのに、工場長さんの口から出て来た言葉は意外なものだった。

っていうか、普通怒るものじゃないのかな?

ふっと工場長さんの方を見ると…

「今日は大丈夫…?は、働けそうですか…?」

「いや…、働きますけど…」


工場長さんの目が明らかに泳いでいる。

そりゃ、クビにならずにこのまま働けるなら嬉しいけど…。

工場長さん、何で私に敬語使ってるんだろう。


「そ、そう。働けるならよかった…。それじゃ無理せず働いて下さいね」

「は、はぁ…」

「それじゃ、私はまだやることがありますから━━━」

「あ、あの…っ」

それだけ言い残すと私の目の前から走り去ってしまった。

私の呼び止める声など無視してさっさとどこかへ行ってしまった。



クビにならずに済んだのはよかったが、工場長さんのあの態度。

普通なら無断で仕事をサボッた社員なんて厳重注意か最悪はクビだ。

なのに、派遣社員の私にあんなに気を使ってるんだろう。







その後、何の沙汰もなく話し合うこともなく時間だけが余ってしまったので、自販機で飲み物を買い休憩室で時間を潰した。

工場長さんのあの態度は気になるがクビにならなくてよかったと思うことにした。



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