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BLACK WOLF~crime~
第1章 籠ノ鳥
「そ、なんですか…」


そう言って酒井さんは私にニコッと笑ってくれた。



酒井さんは毎日が楽しくて充実しているんだ。

だからあんな素敵な笑顔が出来るんだ。

私は…。


黒埼さんがやった事とは言え大学を中退して、今は生活のために毎日仕事して、週末は黒埼さんの家でぼんやりしながら過ごしている。

大学在学中からそうだったけど、私にはこれと言ってやりたい事がない。

目標もないし、将来の夢もない。

ただ黒埼さんの腕の中で甘えてるだけ。

私はずっと、このまま…?

何も見つけられないまま、ずっとこうして…?


「ベルギー産のチョコクッキーみたいですよ。ピーチティに合うかしら」

「…ありがとうございます」

酒井さんの笑顔が、太陽みたいに眩しく感じた。





私が本当にしたいこと…。

私に出来ることって何だろう…?

私も酒井さんや黒埼さんみたいにやりたい事が見つけられるんだろうか?













酒井さんとのティータイムを終えた私はいつものように帰路に着いた。

今日は日曜日だから明日から仕事だ。

普段は派遣社員として小さな工場で08:45から18:00まで働いている。

文具用品の梱包や検品といった所謂流れ作業である。

別にこれと言った理由もなく家から近くて時給がいいってだけで決めただけだし。

生活のためだし贅沢は言えないけど。



空は曇り空。

今にも降り出しそうだ。

灰色の空からはゴロゴロと唸りを上げている。




黒埼さんの家から最寄りの駅まで歩いて、それから電車で3駅。

下車してまたしばらく歩いて、それでやっと自宅である。




時間は18:45。

今から晩御飯作って…、お風呂は黒埼さんの家で済ませたし後は眠るだけだ。



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