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BLACK WOLF~crime~
第2章 森ノ蝶
な、何…?
何なの、この雰囲気…。
楽しそうな笑い声の隙間を縫うようにして聞こえてくる声。
あはは、きゃはははっ!
「あの子でしょ?黒埼 明さんの恋人って…」ヒソヒソ
あはは、やだ~、あははっ!
「えー、普通の子じゃない?大して美人でもないし…」ヒソヒソ
マジぃ?うふふ、きゃはは~
「行く行くは玉の輿なのに、何でこんな所で働いてんの?」ヒソヒソ
やめて…。
誰だかわからないけど、やめて、やめてよ…っ。
「私達のことバカにしてんじゃない?」ヒソヒソ
「あー、お嬢様の我が儘ってやつ?"庶民の生活に憧れて~"的なね。昨日も仕事サボッて黒埼さんと密会してたらしいし」ヒソヒソ
「黒埼様ってもっと面食いだと思ってたわ」ヒソヒソ
「あら~、100万ほどポーンッと貸してくれないかしら~」ヒソヒソ
嫌っ!
誰が言ってるの…?
誰がやったの…?
ヒソヒソ、ヒソヒソ
クスクス…
クスクス…
嫌、いやぁぁぁぁぁぁっ!!
ガタッと席を立ち食堂を後にした。
ここにいたくない…。
誰かが私を見てる。
私の話をしてる。
陰でコソコソと、聞こえてないと思ってるのか知らないけど全部耳に入って来てしまう。
仕方なく向かったのは職場の裏。
外の空気に当たりたかったし、何より室内にいるとヒソヒソ話を気にしすぎて頭がおかしくなってしまいそうだったから。
「はぁ…、はぁ…うっ」
会社の壁に持たれながらその場に座り込んだ。
ここなら、泣いたって誰にも見られないだろう。
黒埼さんが凄い人だって事は知ってた。
でも、まさかこんな目に遭うなんて思ってなかった…。