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BLACK WOLF~crime~
第3章 蜘蛛ノ糸
━━━━━━っ!
いろんな音が洪水のように押し寄せてくる。
耳を塞いでも脳裏にこびりついて夢にまで出てくる。
助けて…、誰か、助けてよ…。
何時間そうしてただろう。
耳を塞ぎ、部屋の隅で小さくなったまま、気づけば辺りは真っ暗だ。
もう夜か…。
最近の私はずっとこんな調子だ。
外に出るのが恐くてひたすら部屋の中で時間を潰すだけ。
昼間に外に出て人の目に触れるのが恐くて夜になってから出歩くようになってしまった。
今は24時間営業のスーパーも増えたから夜中に買い出しも出来るし。
このままじゃダメだと言うのはわかってる。
でもやっぱり、どうしても恐い…。
心が凍ったように動かない。
やらなきゃいけない事は沢山あるのに、頭ではわかってるのに…。
真っ暗な部屋で考え事をするとどうしても嫌な事しか浮かばない。
以前の明るくて前向きな私はもういない。
私はこのまま、こうして一生━━━━━━。
すると…
コンコンッ
「……?」
部屋をノックする音が聞こえた。
誰か来たみたいだ。
また管理人さん?
コンコンッ
いや、違う。
管理人さんの暴力的な叩き方じゃなくて、何だか優しい響き。
誰、だろう…?
コンコンッ━━━━━「舞?いるのか…?」
……この声は…。
気のせい…?
コンコンッ━━━━━「いねぇの?」
ドアの向こうから聞こえて来た声にハッとした。
凍った心が少しだけ溶けて懐かしい記憶が甦る。
聞き違えるはずがない。
「舞…?」
「ハルちゃん…」
ドアの向こうの声は、幼馴染みのハルちゃんだった。
でも、どうして…?
ハルちゃんは私の今の住所は知らないはずだ。
ど、どうして…。
「ハルちゃん…っ!」
そんなこと、もうどうでもいいっ。
這うように立ち上がり玄関へと走った。
慌てて鍵を外しドアを開けると…
バンッ!!
「うわっ!びっくりした…、いきなり開けんなよ…」