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BLACK WOLF~crime~
第3章 蜘蛛ノ糸

黒埼さんは社長さんだ。

それに私よりずっと年上の大人の男性。

そんな頻繁に連絡をしてくるような人じゃないし暇もない。

私が嫌がらせを受け始めたあの日から連絡はまだない。

なのに━━━━、鳴り響く携帯に嫌気が差しながら黒埼さんからの連絡を待つために電源を切れないでいる。

…私は、待ってしまってる。


「忙しいって言ってもあの男のせいでこんな目に遭ってるようなもんじゃねぇかっ!あの男がお前の職場に連絡なんかしたから…っ」

「…うん、そうだよね」

わかってる。

わかってるのに…。


今の現実を見て思い知らされてしまう。

黒埼さんは私なんかが近寄っちゃいけない人だった。

社長としても男性としても絶対的な地位を持ってる人。

近寄っちゃいけないし、私とは住む世界が違う人だ。



「━━━━別れろよ」

「え…?」

「わ、別れちまえよ、そんな男っ!こんな時にそばにいてやれねぇなんてそんなの恋人でも何でもねぇだろっ!?」

「ハ、ハルちゃ…」


やめて…。

そんな、決定的な事言わないで…。

必死に封印してた思いが溢れ出す。

自分の気持ちに気づかないように"好き"という気持ちで蓋をしてたのに。


「俺はお前が幸せならそれでよかった…、けど、今のお前は胸張って"幸せだ"って言えんのか?…見てらんねぇよっ」


幸せ…?

私、今幸せなの?

黒埼さんとは恋人らしいことは何1つ出来てない。

現に今も辛い。

"それでも幸せなの"と言えるほど、そんなドラマチックな関係でもないし、強くない。

「でも、私は…っ」

「お前は自分で思ってる以上にそんなに強くねぇだろ?ガキの頃から見てんだからわかるよ」

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