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シミュレーション仮説 (旧作)
第13章 その夜、恵子は腕によりをかけてご馳走を作った。
 その夜、恵子は腕によりをかけてご馳走を作った。
 稼ぎが十分な篤志は、恵子にたくさんの時間を与えてくれた。

 その中で料理教室に通い、身に付けた技術。
 今までは、連日の篤志との交わりのために、いつも体が重く、手を抜いてもそれなり以上の料理が作れるようになれば、と思っていた。
 
 今夜は心を込めて作った。
 恵子なりに調べ、勢力増強に効果のありそうな食材を選び、丁寧に。

 見るたびに小さくなるような夫の姿に、恵子も心の痛みを感じた。
 離婚を考えていたとはいえ、篤志は恵子に愛情を注いでくれたし、もう何年も連れ添った相手の、悄然とした姿は見たくなかった。

 自分が惚れたのは、若々しくて自信満々で、行動力に溢れた篤志だ。
 その篤志の活力の源が、恵子がウンザリするほどの性欲だったのだと、初めて知った。

 愛情を込めた料理に、篤志は少しだけ笑顔を見せてくれたものの、それだけだった。

 恵子は悲しくなった。
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