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シミュレーション仮説 (旧作)
第13章 その夜、恵子は腕によりをかけてご馳走を作った。
 灯りを消した寝室のベッドの中。恵子は裸になり、同じく裸にした篤志に体を重ねた。
 
 篤志の手は動かない。勃起の出来ない体は、篤志の全ての活力を奪ってしまった。
 性欲すらも。

 あれからこうして、裸で体を重ねるのは初めてだった。
 とはいっても、動いているのは恵子のみで、篤志はされるがままに横たわっている。

 恵子は、篤志の体に舌を這わせる。
 唇を重ね、舌を絡ませ、首筋から鎖骨を通って、篤志の乳首を舌先で転がす。

 責めるのが好きな篤志は、こんなふうに恵子の舌で体中を愛撫されたことがなかった。
 フェラチオくらいはさせるが、それ以外は篤志が恵子を責め続けた。

 立場が逆になり、篤志は全身に愛撫を受ける。

 舌先がくすぐったくも、ぞわぞわとした快感が湧いてくる。
 
 恵子の舌が、篤志の性器へ触れる。
 時間をかけて体中を愛撫されたのにもかかわらず、篤志のそこはピクリとも反応しない。

「ん…恵子…もういいよ」
「もうちょっと…」

 悲しそうな声に、恵子は反発する。
 篤志の先端をくすぐり、亀頭の形を確かめるように、円を描くように舌を動かす。
 裏筋につつつ、と舌を滑らせ、袋に包まれた睾丸を口に含む。
 口内で睾丸を転がしながら、右手で柔らかく肉棒を握り、左手の指先はかすかに足の付け根辺りを掻く。


 篤志は身をよじる。
 勃起はしなくても、舌の感触は伝わる。それは確かに性の感覚だ。
 勃起も射精も出来ない篤志にとって、その快感は生き地獄だ。

 それでも恵子は執拗に丹念に舐める。舐め続ける。
 篤志の手を取り、自ら割れ目に導く。指を中に潜り込ませる。

 篤志の指は、恵子に促された時のみ、わずかに動く。
 一向に自発的な動きを見せないその指に、それでも恵子は、久しぶりにほんのわずかな快感を、得ることが出来た。
 恵子は、篤志の顔をまたぎ、顔に性器を近づける。

 お互いのものが目の前にあり、恵子は一心不乱に口での奉仕を続けた。
 
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