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快楽の奴隷
第12章 『嗤う人形』
気を紛らせるようにテレビをつけたが、チャカチャカと騒がしい番組は彼女を落ち着けさせる効果はなかった。
すぐに消して外を眺めながらコーヒーを飲む。
花純の予想通り、鈍い色の雲は雨粒を落とし始めていた。
時刻は八時を回っている。
花純はつい、手を伸ばし嗤う人形を手に取ってしまう。
開いてはいけない禁書のように思っていたそれを、冒頭から読み始めてしまう。


高梨を彷彿させる男が年の離れた従妹を愛するシーンは目を覆いたくなる。
優しく愛を語るシーンでは失恋したような苦しさを味わった。

読みたくないのに読んでしまう。
小説を投げ出したいくらいなのにページを捲る指は止まらなかった。

狂おしいほどに従妹を愛している。
それが文字の一つ一つから伝わるようだった。
そして従妹もその愛を受け入れて、許されざる恋路をひた歩いていく。


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