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快楽の奴隷
第16章 応えすぎる心
「実は先生、今凄い気合い入れて新作を書いてるンすけど」
「書いてるならいいじゃないですか?」
「いや……それが……」

森崎はボブの髪をぐしゃぐしゃに散らすように頭を掻く。
ドラマで観る金田一耕輔のような仕種だった。
さすがにフケは落ちないのが唯一の幸いだ。

「官能小説じゃないンすよ……」

今さら潜めた声で編集者は呟いた。

「えっ……?」

それには花純も驚きを隠せなかった。
高梨の作品はすべて読んだ彼女だったが、官能小説じゃない作品は読んだことがなかった。

「先生、今回はラブロマンスで濡れ場はないって言うんです。純愛もの。プラトニックで、それでいて燃えるような恋の話だって……」

困惑しきった顔で森崎は語る。

「そう……なんですか……」

何と答えて言いかすぐには思い浮かばなかった。

「せっかく前作が大好評だから熱が覚めないうちに新作をって思っていた矢先なのに……」


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