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快楽の奴隷
第16章 応えすぎる心
「これ、参考書ッス。なんとかお願いするッス」

引く花純などお構いなしに森崎は鞄から本を取り出す。
『もっと愛し合うふたり』『快楽を味わうマニュアル』などという毒々しいタイトルと表紙をテーブルの上に置かれた。
その時ウエイトレスがコーヒーを運んできたので花純は慌ててそれを自分の膝の上に置いて隠してしまう。

「じゃあお願いするッス」
「えっ!? ちょっと!?」

言いたいことだけ言うと森崎は伝票を持って席を立ってしまった。
残された花純は居心地悪そうにコーヒーをさっさと飲み干して店を後にした。


「何なの、もう……」

部屋に戻った花純は若干苛立ちながら渡された本をテーブルに置いた。
しかし森崎の言っていたことは彼女も気掛かりだった。
高梨が官能小説を書かないというのは、胸に痛みを感じさせる。
『それってやっぱり……私が原因なのかな……』
花純の心に暗い影が落ちる。



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