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快楽の奴隷
第16章 応えすぎる心
女学生のようにはしゃぐ花純はいそいそとトロを高梨の皿に起き、雲丹を自分の皿へと移す。
普段は日本酒をあまり飲まない高梨だが、今夜はやけに美味しく感じていた。
花純がここまで浮かれている理由が、売り上げの面で『嗤う人形』を越えたことに起因していることは分かっていた。

「今、新作を書いてるんだ」

ゆったりと寛いだ高梨の声に花純はビクッと反応してしまった。
しかし悦に入ってる彼は花純の反応に気付いていない。

「今度はラブロマンスだ。人生はじめての、官能小説じゃない小説を書いてる」
「そうなんですか……」

浮かない声を聞き、ようやく高梨は彼女の異変に気付いた。

「どうした?」
「いえ……どういう心境の変化なのかな……と思いまして」
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