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快楽の奴隷
第18章 なくして、得るもの
各テーブルの紙ナプキンの補充を終えて時計を見ると夜八時を回っていた。
「チェック終わりました」
「あー、お疲れ。もう上がっていいよ」
オーナーシェフは微笑みながら花純に声をかけ、弁当箱に入れたまかないを手渡す。
「これ、食べてね」
「ありがとうございます」
花純は下町の洋食レストランでバイトをしていた。
今はまだホールだが、時おり仕込みの手伝いもさせてもらっている。
新しい生活で、彼女は新しい夢も持った。
ここで修行を積み、将来は自分の店を持ちたいと考えている。
「あっ……沼田さん」
着替え終わり帰ろうとしたところを呼び止められて振り返る。
「あ、城(じょう)さん」
花純の勤めるレストランの見習いコックである城は少し強張った顔をしていた。
「なんですか?」
「いや、あの……」
年齢は花純より三つ上の三十歳だが、ひた向きで不器用な性格を表したかのような童顔だった。